2011年5月20日金曜日

東電需給計画の我流解釈

今日のブログは愚痴の多い、独り言になると思うので、前向きに世の中と対峙しようと考えている御仁には余りお勧めできない。
3月11日の大震災以来、東電と付き合ってきたが、ホトホト疲れさせられる相手だ。情報は批判が集中するまでは徹底的に隠す。出す情報、数字は必要最小限。しかもトリック一杯で、鵜呑みにするととんでもないことになる。裏の裏まで読まないと騙される。かくゆう私のような東電とお付き合いの浅い者にとっては、まるで答えもヒントもないひねくれパズルを解いているような、妙な心地である。
それでも行き掛かり上、途中で止めるのもシャクに触るし、私にも多少意地があるので、恥を承知で今少し、東電に付き合うことにする。
さて少し気分がすっとした所で、本題に入る。

東電はこれまで3回今夏の需給見通しなるものを発表してる。これが先ほど愚痴った元のひとつであるが、この全体像を把握するのはかなり労力を必要とする。きわめて短い文章ながら、いやだからこそ読めば読むほど分からなくなる。そうも言っていられないので、私なりの大胆な推理と解釈(多分間違っていると思うので、信用しない方がいい。)を加えて、この全容に迫ってみたい。
これからの説明では3月25日のプレスリリース、4月15日のプレスリリース、5月13日のプレスリリースが中心になるが、一々記述すると煩雑になるので、すべて「3/25PR」のように表示することを、あらかじめお断りしておく。(夫々のPR本文は東電ホームページのプレスリリースの欄から読むことが出来るのでここでは全文は再掲しない。)

まず最初の3/25PRで東電は3/24現在の供給力を3650万kwとしている。全てはここから始まる。

①3/24現在供給力      3650万kw
②3/25PR増強後  7月末 4650万kw(+1000万kw)
③4/15PR増強後  7月末 5200万kw(+550万kw)8月末 5070万kw(+1420万kw)
④5/13PR増強後  7月末 5520万kw(+320万kw)8月末 5620万kw(+550万kw)

合計増強分は7月末で1870万kw、8月末で1970万kwとなる。

では、内訳を少し細かく見ていこう。
まず②であるが、
東電による内訳は以下の通り。

(1)震災による停止からの復旧 【760万kW】
鹿島火力1~6号機、常陸那珂火力1号機など
(2)長期計画停止火力の運転再開 【90万kW】
横須賀火力3,4号機 1・2号GT
(3)定期点検からの復帰 【370万kW】
品川火力1号系列第1軸、横浜火力7号系列第2軸など
(4)ガスタービン等の設置 【40万kW】
(5)その他 【▲260万kW】
既設火力の夏期出力減少分(大気温上昇による出力減)など

(1)から順番に見ていくと、震災による停止からの復旧で760万kwとある。その中身であるが、「鹿島火力1~6号機、常陸那珂火力1号機など」とさらりと書いてあるが、これが曲者である。東電HPを詳しく見ている方はお気づきだと思うが、鹿島火力は震災以降ずっと2,3,5,6号機が操業を停止中とだけ記載しており、1,4号機については何も触れていない。普通に読めば、1,4号機は操業しているんだなと解釈するであろう。しかし、同じ敷地内で、1,4号機だけが被災を免れるというのも不自然である。しかもこの(1)に「1~6号機」とあるではないか。ということは1,4号機も止まっていたということになる。ではなぜ東電は1~6号機停止とHPに書かないか。東電の言い訳を類推すると「鹿島1,4号機は震災前から定期検査のため停止していました。したがって、震災で停止したのではないので、地震による停止の欄に入れていません。」定検中にどんなに被害を受けたとしても、供給力減にはなっていないというのが、東電の言い分であろう。2,3,5,6号機については4/20までに相次いで復旧したが、その時もこの4機の復旧以外には何も説明していない。なぜそこまでして実態が知られることを恐れるのかまことにもって不可思議な会社である。(また脱線。)
この論法は鹿島だけでなく、いろいろな所に仕掛けられているので要注意。おそらく震災で停止した他の火力(広野、大井、五井、東扇島など)でもこの論法が使われている可能性があるので、震災時の供給力ロスは実際に考えられているよりかなり大きいかもしれない。(筆者ブログ「電力供給危機は実在した!その1」を参照。)

というわけで長くなってしまったが、私の推理では鹿島の1,4号はおそらく震災前定検中に被災し、7月までには全6機が復旧というのが実際の所ではないか。おそらく現時点でもう全て復旧していると思われるが、詳細は不明。

常陸那珂発電所もすでに5/15に復旧したので問題はない。問題はその後の「など」である。鹿島1~6号機(計440万kw)と常陸那珂(100万kw)で計540万kw。残るは220万kw。これが何かであるか、その時点ではまったく分からなかった。最近になって、5/13PRの増強分に広野火力のほとんどが含まれていることが分かり、逆に当初の震災からの復旧分(760万kw)にはその分が含まれていなかったという推定が成り立つ。この点は後でもう一度詳しく説明する。

(2)は問題なさそうなので、(3)に移るが、ここが大問題。定期点検からの復帰370万kwとあるが、例示はたった2機(計73万kw)のみ。残りの300万弱はまったく不明。新聞報道などで、半分程度は分かったが、後はまったく分からず。東電に再三定検中の火力について照会したが、まったく無視。そのうちHPから問い合わせのコーナー自体が消えてしまった。原発でお忙しいんでしょうが。一応私企業ということになっているので、お客様は大事にしなきゃね。
さらに先ほどの鹿島の所で触れたように、定検からの復帰はあくまでも震災によって被災しなかった発電所のみ(復旧ではなく復帰の文字を使っている点に注意。)であって、震災時に定検中で、被災したものは復旧組みに入ることになる。
(4)のガスタービンについてはある程度詳細にPRで発表しているので、特に問題はなさそう。(5)についても問題なかろう。

次に③に移る。③の内訳は次の通り。

(1)ガスタービン等の設置【7月+20万kW(計60万kW)、8月+80万kW(計120万kW)】
千葉火力、袖ヶ浦火力敷地内など
(2)震災停止・定期点検からの復帰【110万kW】
鹿島共同火力1,3,4号機、常磐共同火力8,9号機
(3)その他 【20万kW(7月)、▲170万kW(8月)】
7月末から8月末への供給力減少(190万kW)については、柏崎刈羽1号機および7号機の定検停止によるもの
(4)揚水発電の活用【400万kW】

(1)については先ほどと同様で特に問題はないが、注意を要するのは8月の「+80万kW(計120万kW)」の表現である。普通に考えれば、①のガスタービン増設が40万kw、今回の7月末増強分が+20万kwで計60万kw、さらに8月末までに80万kwなら計140万kwになるはずであるが、この80万はあくまで3/25PRからの増分という意味のようで、正味60万kwで計120万と読むらしい。なんとも不思議な表現である。
次の(2)は共同火力の復帰、復旧分をさしているようである。鹿島共同火力の1,3,4号機は計105万kwで東電分は半分の52.5万kw、常磐共同火力8,9号機は計120万kw、東電分は49.11%で59万kw。合計111.5万kw。ほぼ110万kwで、符合している。
(3)その他の20万kwは内容不明。柏崎定期検査は2機分でマイナス190万kw。(▲170万kWとあるのは単なるミスタイプ?)柏崎については5/13PRでは一言も触れていないが、ということは予定通り定期検査を行うということらしい。数字的にもそうなっている。延期のうわさもあったが、浜岡原発のこともあるので、定検延期は難しいのであろう。
(4)揚水発電についてはすでにこれまでに述べたので省略。

最後に④について。内訳は次の通り。

(1)ガスタービン等の設置    【7月+20万kW(計80万kW)、8月+30万kW(計150万kW)】
(2)震災停止・定期点検からの復帰 【7月+60万kW、8月+280万kW】
    長期計画停止中の横須賀火力5~8号機(各35万kW)を除いた当社全火力発電所の復帰を織り込み
(3)その他 【▲10万kW】    自家発余剰の購入の増、応援融通の減
(4)揚水発電の活用 【+250万kW(計650万kW)】

(1)については前に書いた通り、7月末はこれまでの40万+20万+20万で計80万kw、8月末は足し算に注意して、今回正味10万kwで、40万+20万+60万+20万+10万で計150万kwとなる。

次が問題含みの7月末+60万kw、8月末+280万kwである。これが何を指すかはこれだけでは分からないが、PR発表時の記者会見などからこの中身は広野を指しているようである。しかもこれによって「長期計画停止中の横須賀火力5~8号機(各35万kW)を除いた当社全火力発電所の復帰を織り込」んだと言うので、広野の全能力もこれまでの増強計画に全て含まれていることになる。7月末の+60万kwが広野火力の1機だとすると、8月末の220万kw(例によって280万kwには7月末の60万kwも含まれるので、正味は220万kw)はおそらく、第3機(100万kw)を除く他の3機(100万kw×1機、60万kw×2機)とみられる(100万kw2機の内第4機が220万kwに含まれているとの情報から)。では残る1機(おそらく第3機)はどこに行ったのか?いよいよ推理の佳境に差し掛かった。

その前に念のため触れておくが、広野に関しても東電PRでは今も「2,4号機が地震により停止」とだけしか記しておらず、他の1,3,5号機の状態についてはまったく明らかにしていない。私の知る限りでは新聞でもこれまで1社のみが全機停止中と簡単に述べているだけである。東電のご意向で、知っていて書かない記者クラブの体質がなせる業なのか、調べる気がないのか、疑問すら感じないのか、実態は闇の中である。また余談が長すぎた。

この謎解きは少々大胆すぎてちょっと書くのは躊躇するが、そこが素人のいい所で、失敗を覚悟で推理してみよう。何せ現場を見ないで書くので単純な数字合わせに過ぎないのだが。

ここで一番最初の①の「震災による停止からの復旧【760万kW】」に話は戻る。
鹿島1~6号機(計440万kw)と常陸那珂(100万kw)で計540万kw。残るは220万kwというところまでは最初に書いた。
では残りの220万kwの中身は果たして?ここからが大胆推理の始まりである。

まず考えられるのが、共同火力、IPPなどの他社受電分である。これら震災からの復旧分が3/25時点でどの位見込めたか試算すると、

住友金属鹿島火力(IPP)          47.5万kw 
日立造船茨城発電所(IPP)                   25万kw 
日立臨海発電所(IPP)                         18.9万kw
JX日鉱日石エネルギー根岸(IPP)           34.2万kw
             計                         125.6万kw

共同火力については4/15PRで、鹿島共同火力1,3,4号機、常磐共同火力8,9号機を織り込んだが、3/25時点で見込みの立った共同火力はなかったように思う。

これを220万kwから引くと94.4万kw。ほぼ100万kw。広野火力の3号機能力に大体符合する。もちろん疑問はある。もしそうだとしても、特になぜ広野3号機だけが当初から復旧可能と見込まれたのか。しかしここに第3機分を含めないと第3機が宙に浮いてしまうのも事実である。なにしろ横須賀火力5~8号機を除いた東電全火力発電所の復帰を織り込んだと言っているので、ここ以外に含める所がないのである。もちろん稼動中だというなら話は別であるが、そういう情報もない。

以上が760万kwの謎に対する私の大胆推理である。見当外れの可能性は大であるが、一応記しておく。

さて残るは(3)の「その他【▲10万kW】自家発余剰の購入の増、応援融通の減」の部分である。

応援融通から話を始めたい。まずこの分(周波数変換所3カ所の計100万kwと北海道からの60万kw)は、現状ではおそらく利用されていないと思われるが、3/24現在の供給力(3650万kw)に含まれていたようである。3/25以降の増強計画に新たに加えられた形跡はなく、 「応援融通の減」とあるということは当初から含まれていたと解釈せざるをえないからである。
実際に応援融通の減少分とは何か。僅かしかない情報も矛盾が多く、はっきりしないが、大体次のような状況ではないかと思う。
北海道からの融通分は30万減って30万kwのようだ。周波数交換所関連では、中部電力から融通される予定であった75万kwが浜岡原発停止によって難しくなったが、この分は関西電力などからの融通で賄い、予定の103万kw(中電増分3万kwを含む。)全量確保が可能になった模様。
一方、自家発電余剰の購入は10~20万kw程度しか見込めない模様で、結局応援融通との差し引きで、マイナス10万kwということらしい。残念ながら、今のところこの程度しか分からない。

以上が東電が示した電力供給計画の内容分析結果である。
無謀とも思える仮説を含んでいるので余り信憑性はないが、東電の情報隠しの前では、私としてはこれが精一杯の結果であることを告白せざるをえない。東電情報の多少の整理に役立てば幸いである。

(おわり)

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