2011年5月14日土曜日

電力供給危機は実在した!その1

1.電力供給危機は実在した!


3月の東電による計画停電は本当に必要だったのか。相変わらず議論百出だが、実はきちんとデータで詰めた話にはなっていないような気がする。そこであえて ちょっとショッキングなタイトルを付けたが、改めて、出来るだけ客観的にデータを元にした検証をしてみたいと思う。

今更の感もあるかもしれないし、東電の秘密主義のためにどこまで出来るか自信はない。しかし、中電の浜岡原発停止決定を受けて、またぞろ今夏に向けての電力供給問題が頭をもたげてきた昨今、この命題に挑戦してみる意味もあるのではなかろうか。

前置きはこの位にして、この検証を始めるにはまず大震災直前の東電の電力供給力の把握から始めねばならない。その時点での自社分、他社受電分は筆者推定で次の通りとなる。なおここで使っている数字は、基本的には筆者がすでに本ブログ 「方丈庵 東電東電供給力の一考察」に掲載しているものを使っているので、結論のみを示す。詳細はそちらを見ていただきたい。


・大震災直前の東電供給力

(1)自社分: 1212.4万kw(原発)+2927.1万kw(火力)+218.2万kw(揚水除く水力)=4358.1万kw。揚水680.8kw含むと5038.9万kw。

(2)他社受電分: 88万kw(原子力)+501.7~546.5万kw(火力)+192.6万kw(揚水除く水力)=782.3~827.1万kw。揚水372.5万kw含むと1154.8~1199.6万kw。

以上から、

(3)震災直前の総供給能力: 揚水を除くと5140~5185万kw。揚水を含むと6194~6239万kw

ついで、震災直後の供給力について試算してみよう。

・震災直後の東電供給力

(1)自社分: 491.2万kw(原発)+2150.6万kw(火力)+218.2(揚水除く水力)=2860.4万kw。揚水680.8万kwを含めると3541.2万kw。

(2)他社受電分: 0(原子力)+236.9~281.8万kw(火力)+192.6万kw(揚水除く水力)=429.5~474.4万kw。305万kwの揚水を含むと734.5~779.4万kw。

以上から、

(3)震災直後の供給力: 揚水を含まないケースで2860.4万kw(自社分)+429.5~474.4万kw(他社受電 分)=3290~3335万kw。揚水を含むと3541.2万kw(自社分)+734.5~779.4万kw=4276~4321万 kw

それでは東電の電力供給力は震災によってどれだけ失われたのか。計算してみよう。

・失われた供給力

まず揚水を除いたケース。5140~5185万kw-3290~3335万kw=1850万kw。何と36%、1/3以上が失われたことになる。

揚水を含んだケースでは、6194~6239万kw-4276~4321万kw=1918万kw。この場合でも31%、3割強である。

ここで一応震災によって失われた能力の中身を簡単に説明しておこう。言うまでもないが震災前にすでに定検などで停止されていた能力分は震災前能力から除いてある。広野と鹿島に関しては操業中に被災した分以外(計340万kw)は定検中に被災したと推定されるので、差し引いてある(その他は不明なので、一応稼動中と見なした)。

自社分では、原発が福島第一原発第1~4号機(計281.2万kw)、福島第二原発第1~4号機(計440万kw)で合計721.2万kw。火力発電所は広野、常陸那珂、鹿島等6箇所計11機の776.5万kw。したがって合計1497.7万kwの減。

他社受電分では、日本原電東海第二原発分(88万kw)の他、火力では鹿島、常磐、相馬の各共同火力の計126.7万kwとIPP関連の住友金属鹿島火 力、日立造船茨城、日立臨海、JX日鉱日石エネルギー根岸、昭和電工川崎事業所などで計138万kw。火力合計264.7万kw。よって他社受電分は合計 352.7万kw。

自社分、他社受電分の合計は1850万kw。

これに他社受電揚水(電源開発の沼原発電所。67.5万kw)の減少分を加えると1918万kw。

これが先ほど示した、震災によって失った能力の内訳である。

なお3/11の大震災直後には、前のブログでも触れたように、東電水力発電所23箇所、変電所9箇所が運転を中止したが、水力発電所については12日中に全 て復旧、 変電所も15日までに全て復旧した。水力についてはごく短期間の停止であったので、ここで言う失われた能力には加えていない。しかし後で触れるが、計画停 電の考えを東電が明らかにしたのが、12日の午前と思われるので、その時点ではまだ水力発電所は復旧していなかった可能性が強く、この能力停止は判断にか なり影響を与えたかもしれない。

ここで改めて数字を整理してみると、

(揚水を含まないケース)
・大震災前の東電供給力   5140~5185万kw
・震災直後の東電供給力    3290~3335万kw
・失われた供給力           1850万kw
・同上 %                36%

(揚水を含んだケース)
・大震災前の東電供給力    6194~6239万kw
・震災直後の東電供給力      4276~4321万kw
・失われた供給力           1918万kw
・同上 %               31%


(続く)                                 110519加筆、修正

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