6カ所の火力発電所、22ヵ所の水力発電所、8ヵ所の変電所が操業を停止する深
刻な事態となった。このため東電は14日(月)から急遽計画停電の実施に踏み切
った。
この時点でツイッター上では、原発が止まってしまったので計画停電止むなし
という意見から、以前に原発が全てストップした時にも停電しなかったので火
力で十分対応できるはず、といった両極端の主張を初めとして様々な意見が飛
び交った。しかし色々読んでいても、情緒的に捕らえている意見が目立ち、あ
るいは東電 に対する不信感が先に立って、原発の必要性を主張するための策略
ではといった考えも散見された。
そこで筆者は客観的情報とデータに基づいて、何が事実なのか探ってみる必
要があるのではないかと判断した。
すでにその一端は@suginakkuriのアカウントで3月22日から26日までの連続ツイ
ートにより明らかにしてきた。しかし短文のツイートに数字の羅列が続いたた
め、せっかく読んでいただいた方がいたとしても、かなり苦痛で分かりにくか
ったものと思う。
そこで急遽新しいブログを立ち上げ、改めて東電の電力供給力について、今度
は少し先の夏頃までの見通しも含めて考察してみることにした。この一文が今後
引き続き検証していく上での土台となれば幸いである。
ただし、筆者の能力の限界と東電の秘密主義の壁に阻まれ、十分なものになっ
ていないことはあらかじめお断りしておかなければならない。
早速本題に入りたい。
1.東電の自社電力供給能力
2011年3月現在の東電の定格能力は合計約6495万kw。シェアは水力14%、火力60
%、原子力27%で、2009年度とほとんど変わらない。
- 最大出力千kw 箇所数 2009年度 シェア% 2011年3月 シェア%
- 水力 160 8,987 13.9% 8,989 13.8%
- 火力 25 38,189 59.2% 38,645 59.5%
- 原子力 3 17,308 26.8% 17,308 26.6%
- 新エネルギー等 2 4 0.1% 4 0.1%
- 合計 190 64,487 100.0% 64,946 100.0%
この6495万kwをベースに最近の実際の供給能力を試算してみたい。
まず、冒頭で述べたように3月11日の大震災で操業停止に追い込まれた能力を見
てみよう。
- 福島第一原発 第1~4号機 計281.2万kw 震災で運転中止
- 同 第5,6号機 計188.4万kw 定期点検中震災
合計469.6万kw
- 福島第二原発 第1~4号機 合計440万kw 震災で運転中止
福島原発合計 909.6万kw
火力発電所
- 広野 第2,4号機 計160万kw 震災で運転中止
- 常陸那珂 第1号機 100万kw 震災で運転中止
- 鹿島 第2,3,5,6号機 計320万kw 震災で運転中止
- 大井 第2,3号機 70万kw 震災で運転中止
- 五井 第4号機 26.5万kw 震災で運転中止
- 東扇島 第1号機 100万kw 震災で運転中止
火力合計 776.5万kw
水力発電所
- 福島14発電所 震災で運転中止
- 栃木4発電所 震災で運転中止
- 山梨4発電所 震災で運転中止
変電所8カ所 震災で運転中止
このように震災当初は福島原発909.6万kw、火力発電所776.5万kwの計1686.1万
kwの他、水力発電所22箇所、変電所8箇所が停止するという大きな影響が出た。
しかし水力発電所、変電所は15日までには全て復旧した。
一方、火力発電所の復旧状況は以下の通りである。
- 大井3号機、五井4号機 3月15日までに復旧 (計61.5万kw)
- 大井2号機 18日までに復旧 (35万kw)
- 東扇島1号機 25日までに復旧(100万kw)
- 鹿島3号機 4月6日までに復旧(60万kw)
- 鹿島2号機 7日までに復旧(60万kw)
- 鹿島5号機 8日までに復旧(100万kw)
- 鹿島6号機 20日までに復旧(100万kw)
この結果、合計516.5万kwの火力が復旧し、なお震災により停止中の火力は260
万kwとなり、福島原発停止分とあわせた停止中能力は1169.6万kwとなった。
原発、火力停止分は、当初全能力6495万kwの26%にも及んだが、現在は18%
まで改善した。
なお停止中の火力は以下の通りであるが、被害がかなり甚大であり、早期の復
旧は望めそうもない。
- 広野火力2号機(60万kw)、4号機(100万kw)
- 常陸那珂火力1号機(100万kw)
次にその他の原発(柏崎刈羽原発)と火力の状況を見てみたい。
柏崎原発(総能力821.2万kw)では現在第1,5,6,7号機が稼動中で、2,3,4号機は
定期検査中であり、停止中3機の合計は110万×3機で330万kw。
火力は定期検査中の能力について東電が詳細を明らかにしていないので、試算
が難しいが、震災分を除く全てが稼動中と仮定すると3864.5万ー震災分260万の
3604.5万kwとなる。ここから今定期検査中がはっきりしている品川1-1号機、横
浜7-1号機、袖ヶ浦1号機(4月末までに復帰予定の報があったがいまだ復帰の報
無し。)の計133万kwと長期計画停止中の横須賀8機計227.4万kwを差し引くと、
3244.1万kwとなる。
さらに東電によると(3/25プレスリリース)7月末の供給力に計370万kwの定期点
検からの復帰分を見込んでいるとしている。ということは全て火力とすれば現
在370万kwの火力が定期点検中と考えられ、上述した定期検査中がはっきりして
いる品川、横浜、袖ヶ浦の計133万kwを除いた237万kwをさらに差し引かねばな
らない。結局火力の現能力は3007.1万kwとなる。
追記:(110520)その後常陸那珂発電所(100万kw)が5月15日に運転を再開した
ので、これを加え、一方震災で被災しなお停止中の広野火力2,4号機以外の
1,3,5号機(計220万kw)も停止している可能性 (おそらく定検中に被災)が高いので、
これを差し引くと、火力の現能力は2887.1万kwとなる。
残るは水力であるが、上の表にあるように2011年の総能力は899万kw。かなりの
能力である。しかし後で詳述するが、これを単純に足すわけにはいけない。な
ぜならこの899万kwのうち680.8万kwは揚力発電で、一般の自流式、貯水池式の
水力は218.2万kwに過ぎない。実に揚水が76%を占めている。後で理由は説明す
るが、当面揚水は除いて供給力を試算することにする。
以上長くなったがもう一度整理すると、現在実際に使える自社能力は
- 原発(柏崎1,5,6,7号機) 491.2万kw
- 火力 2887.1万kw
- 水力(揚水を除く) 218.2万kw
- 総計 3596.5万kw
ということになる。
(続く) 2011/5/1記 110520追記。
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