東電自身の能力に加え、供給力として当てに出来るのは、応援受電、他社受電など
であるが順次見ていこう。
(1)応援受電 最大160万kw。
内訳は次の通り。
- 新信濃変換所 60万kw (周波数変換所)
- 佐久間変換所 30万kw ( 同上 )
- 東清水変換所 10万kw ( 同上 )
- 北本連携設備 60万kw (東北電力網を通じ、北海道電力から受給)
これらの関西および北海道からの応援受電は3月11日の震災直後から、実際に使わ
れ、最大160万kwのマックス供給力に達した。しかし3月26日以降は供給力に余裕が
生じたのか、使われていない。今後夏に向けて需給が逼迫してくれば、再び復活する
可能性が大であるが、東北の復興が進むと北海道からの応援は東北が優先されると
思われるので、東電が期待出来る応援受電は100万kwまでとなろう。
なお中部電力は東清水変電所の能力を5月までに3万kw増やし13万kwに、さらに来
年秋にも30万kwに増強し、東電へ融通する意向を示している。
(2)他社受電
他社受電に関してはさらに詳細が不明であるが、その主体となる卸電気事業者(電
源開発、日本原子力開発等)、共同火力、卸供給事業者(いわゆる独立系発電事業
者IPP)を中心にチェックしてみたい。
2009年度末の東電他社受電能力は以下の通りであり、一応これをベースに検討して
みる。
他社受電 出力(単位:1000kw)
- 水力 一般 1926
- 揚水 3725
- 小計 5651
- 火力 石油 1182
- 石炭 3174
- LNG LPG 704
- その他ガス 1613
- 小計 6673
- 原子力 880
- 新エネ等 0
- 計 13205
まず原子力であるが、日本原電東海第二原発(110万kw)は大震災の影響で現在停
止中であり、表の88万kwはここからの供給分と思われる。したがってこの88万kwは
まずマイナスとなる。
一般水力については全て問題ないと見なして良いであろう。揚水発電については電
源開発の沼原発電所(栃木県。67.5万kw)が震災で被害を受けて停止中と見られる
が、その他は影響ない模様。
揚水については後述する。
次は火力であるが、まず共同火力の状況を見てみよう。
東電出資の共同火力は4カ所ある。
・鹿島共同火力(東電50%と住友金属工業50%の合弁)は1~4号機(各35万kw、計140万kw。)のうち、1,3号機が大震災の被害を受け、3号機はなお復旧作業中。しかし1号機は4月16日運転再開。2号機は計画停止中。4号機は定期検査中。したがって当面役に立つのは35万kwのみ。東電分は半分の17.5万kw。残る105万kwの半分52.5万kwが東電のマイナス分。
・常磐共同火力は4機合計162.5万kwであるが、1機(8号機60万kw)は定期検査中、2機(7号機25万kw、9号機60万kw)が震災被害で停止中、結局現在1機(6号機17.5万kw)のみが稼動中。東電のシェアは49.11%なので8.6万kw程度となる。損失は約71.2万kw。
・君津共同火力(東電50%と新日本製鐵50%の合弁)は4機(合計59.4万kw)のうち3機が稼動中で、予備の1機(12.5万kw)は停止中。東電分は23.5万kw。東電の停止分は6.25万kw。
・相馬共同火力(東電50%と東北電50%の合弁)は100万kw2機(計200万kw)を有するが、3月11日の震災の際1機は定期点検中、1機は運転停止。当面2機とも運転停止。東電分はゼロ。東電のマイナスは100万kw。
したがって共同火力の東電分は49.6万kwで、東電が失った能力は合計230万kw。
その他の他社受電火力は情報が限られているが、主なものを見てみよう。
・電源開発磯子火力 60万kw2機(計120万kw)を運転中。うち100万kwが東電供給分。
・住友金属鹿島火力(上述IPP) 震災により停止していたが、3月25日に早期復帰、すでに100%稼動(47.5万kw)に入っている。震災前よりすべて東電に供給されている。
・日立造船茨城発電所(IPP) 3機合計25万kwを東電に供給していたが、3月16日に操業を停止した。東電ロス25万kw。
・日立臨海発電所(IPP) 2機合計18.9万kw。詳細不明だが、今のところ停止中の模様。東電ロス18.9万kw。
・JX日鉱日石エネルギー (IPP)同社は東電とは横浜製油所の4.9万kwと根岸製油所の34.2万kwの契約がある。同社に確認したところ、横浜製油所のIPP供給は影響を受けず、継続中。しかし根岸製油所は、3/11の震災で停止。そのまま定検に入り、今も停止中。再稼動は定検明けの5月下旬を計画とのこと(5/6情報)。東電ロスは34.2万kw。
・荏原製作所藤沢工場第二(IPP)6.7万kw。順調運転の模様。
・昭和電工 川崎事業所(IPP)12.42万kw。震災で一旦操業を停止したが、3月17日には再開している。
・トーメンパワー寒川(IPP)6.55万kw。停止の報なし。
・JFEスチール 千葉(IPP)38.18万kw。フル回転操業中。
・ジェネックス(東亜石油、電源開発合弁)(IPP)23.8万kw。操業中。
・ポリプラスチックス 富士市(IPP)4.7万kw。震災の影響なし。
・東京ガス横須賀パワー(IPP)20万kw。東電への供給継続中。
以上から他社受電火力で稼動中と見られる能力は314.4万kw、一方停止中の合計
は共同火力の230万kwプラスその他の78万kwで、308万kwと推定される。残る約
44.9万kwは詳細不明である。したがって現在の他社受電火力の能力は
314.4~359.2万kw。これに水力(揚水を除く)の192.6万kwを加えると、
507~551.8万kwとなる。
これらをまとめると以下の通りとなる。
他社受電出力(単位:1000kw) 2009年度末 現在
- 水力 一般 1926 1926
- 揚水 3725 3050
- 小計 5651 4976
- 火力 計 6673 3144~3592
- 原子力 880 0
- 新エネ等 0 0
- 計 13205 8120~8568
- (揚水除く計) (9480) (5070~5518)
自社能力の3596.5万kwにこの507~551.8万kwを加えた4103.5~4148.3万kwが
現状における揚水発電を除いた東電の総供給力と推定される。
(続く) 110507 上表の現在の揚水の数字が間違っていましたので、訂正しました。
110508 、110520新情報を加えて、一部改定しました。
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