先日ツイッター(7月7日)で名古屋大学のだいずせんせいこと高野雅夫先生がテレビ朝日の「モーニングバード」という番組に出演され、東電の今夏電力供給力についてコメントされたそうだ。そのユーチューブの画像と先生のブログ(http://is.gd/nxI16B)を元に整理した部門別の供給力を下に示してある。
先生の積み上げ計算の元は「電源開発の概要2010経産省資源エネルギー庁電力・ガス事業部編」とのことなので、客観性のあるデータの積み上げによるものである。
そこで筆者の考察した数字との比較をちょっとしてみたくなった。筆者の数字はこれまでにブログに詳しく述べてあるので、ここでは結論だけを使うことにする。一部修正した部分については注として入れることにする。
東電が明らかにしている部門別の供給力も忘れず載せておこう。これは高野先生出演のTV番組で紹介されたものと東電記者会見で明らかにした数字(7月7日付「東電需給計画の我流解釈の続編」の中で筆者が紹介)を基にしている。筆者の知る限りこれが東電の明らかにしている最も詳しい(?)供給力のデータである。こんな簡単なデータですら東電がプレスリリースなどで公式に発表した数字ではなく、あくまでも参考資料である。
では早速始めよう。 (7月末の能力推定)
高野先生 suginakkuri 東電
一般水力 218 411 310
揚水 681 650 650
電源開発揚水 253
火力 3819 4321~4366 3560
卸電力事業者火力 545 480
緊急設置電源 200 80
可動原子力 491 491 490
融通・自家発等からの受電 110
合計 6207 5873~5918 5680
23年度最大電力需要予測 5500 5500 5500
予備率% 11.4 (12.9) 6.8~7.6 3.3
昨年並み猛暑最大電力需要予測 6000 6000 6000
予備率% 3.3(3.5) -2.1~-1.4 -5.3
(注)過去のsuginakkuriのブログでは火力に以下を含んでいたが、当面難しいようなので、差し引いた。
・横須賀火力5~8号機(35万kw×4機計140万kw)の再開
・常磐共同火力7号機(25万kw)復旧 12.3万kw
・応援受電 3周波数変換所 103万kw
揚水は一般水力の詳細が不明なため、従来600万kwと控えめに見ていたが、東電が650万kwを計上したので、びっくり。東電に負けるとは思わなかった。勝ち負けの問題ではないが。したがってここでは東電の650万kwを採用した。一般水力は能力一杯計上しているが、隠れ揚水の存在もあり、揚水がかなり控えめな数字になっていることを考えれば、 妥当な所か。(若干言い訳がましいが。)
高野先生の予備率の計算は東電の予備率の定義とは違うようなので、比較上東電定義に合わせた数字を( )内に示した。
(未定稿ながら、とりあえずここまでを投稿110713)
110717追記
次に、8月末(柏崎刈羽1,7号機定期点検停止)、原発全停止のケースについても結論だけ示しておこう。
高野先生 suginakkuri 東電
8月末
合計 5962 5628~5673 5560
23年度最大電力需要予測 5500 5500 5500
予備率% (8.4) 2.3~3.1 1.1
昨年並み猛暑最大電力需要予測 6000 6000 6000
予備率% (-0.6) -6.2~-5.5 -7.3
原発全廃ケース
合計 5716 5382~5427 5314
23年度最大電力需要予測 5500 5500 5500
予備率% (3.9) -2.1~-1.3 -3.4
昨年並み猛暑最大電力需要予測 6000 6000 6000
予備率% (-4.7) -10.3~-9.6 -11.4
(注)高野先生自身は8月末ケースの試算はしていない。7月末試算から柏崎刈羽停止分を差し引いた。東電も原発全廃ケースの数値は出していない。柏崎刈羽5,6号(計246万kw)分を8月末ケース合計から差し引いた。
なお、東電は7月15日に需給見通しを一部見直し、7月末、8月末の供給力見通しをそれぞれ、計5730万kw、5610万kwに上方修正している(各50万kw増)。これは電源開発の沼原揚水発電所を織り込んだためで、早くも私の指摘した隠し玉の一部が登場した。
(参考)発電所別の詳細調査で知られる「気候ネットワーク」(http://www.kikonet.org/research/ppwatch.html)の7月6日現在の東電供給力合計は5729.2万kwとなっているが、これには広野火力(計380万kw)が含まれていない。単純加算すると6109.2万kwとなる。高野先生の7月末推定値より約100万kw少ない値となっている。
以上が比較の結果であるが、東電は次々上方修正しており、次第に私の推定、高野先生の推定に近づいているのが現状である。
一方で需要推定の方は、6000万kwはおろか5500万kwも非現実的な数字となりつつあると言っても良かろう。私の大胆推定では5100万から5000万そこそこ程度ではないかと思う。その辺は別途大胆(無責任?)推定を行っているので、お暇な方はお読みいただきたい。
(終わり)
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